論文でのAI利用は申告が必要?Springer Natureの方針と声明文の例
Springer Natureの学術誌に投稿する原稿の準備にAIを使った場合は、何に使ったかを説明し、著者が出力を確認して論文に責任を負うことを明示します。現在の原稿準備ガイダンスでは、英文校正などの低リスクな利用にも説明を求めています。記載内容と掲載場所は、投稿先の著者向け案内と投稿フォームも確認して決めてください。
2026年11月5日、Nature Geoscienceは責任あるAI利用についての社説を掲載し、出版社のリスク評価の枠組みと同誌の方針ページの更新を説明しました。枠組み自体は2026年9月10日に発表済みで、11月の社説で初めて導入されたものではありません。
方針の確認日:2026年11月8日。本記事はリンク先のSpringer Natureのガイダンスを対象としています。他の出版社や個別の学術誌では要件が異なる場合があります。
英文校正だけでも申告する必要がある?
現在の原稿準備ガイダンスでは、学術的内容を変更しない文法修正、翻訳、書式調整、著者自身の文章の要約を、緑の低リスク利用に分類しています。ただし、申告欄では利用内容の明確な説明と著者の責任の確認を求めています。
「英文校正なら申告は一切不要」という古い助言だけでは、現在求められる情報が抜ける可能性があります。実際の作業を記録してください。AIが結果の解釈を提案したり新しい段落を書いたりした場合、「文法確認のみ」と書くのは不十分です。
緑・黄・赤の区分をどう読むか
| 区分 | ガイダンスにある利用例 | 著者が行うこと |
|---|---|---|
| 緑:低リスク | 学術的内容を変えない校正、翻訳、書式調整、著者の文章の要約 | 正確性と意味を確認し、利用を説明して責任を明示する |
| 黄:注意が必要 | 構成案、著者の入力に基づく下書き、文献管理支援、検証可能な資料に基づく視覚表現 | 内容と引用を検証し、AIの寄与と人による確認を明らかにする |
| 赤:認められない | 著者や独立した学術的判断の代替、実証データや図の捏造、AIを著者として記載すること | 申告しただけで許可される利用として扱わない |
同じツールでも使い方は異なります。製品名ではなく、原稿にどのような変更を加えたかで判断します。禁止される利用は、声明を添えても許可されません。
図表については、検証可能な入力に基づくかどうかも重要です。元データ、著者が作成した資料、検証済みの計算出力を確認できるようにします。AI支援による視覚表現は原稿内で適切に申告し、図のキャプションにも具体的に記載します。データ、コード、確認記録を残してください。
作業を記録し、出力を確認してから、AIの実際の寄与と著者の責任を説明します。
執筆中にAI利用記録を付ける
作業ごとに1行記録します。これは著者用の記録案であり、Springer Nature指定の書式ではありません。日付やファイル名は、投稿先が提出を求めなくても作業の再確認に役立ちます。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| ツールとモデル | 製品名、提供元、表示されたモデル・バージョン。不明なら推測せずその旨を書く |
| 日付と対象 | 作業日、原稿の節、図番号、ソースファイル |
| 目的と入力 | 校正、構成案、コード作成支援などの作業と、渡した著者資料 |
| 採用した寄与 | 採用、書き直し、却下した提案 |
| 人による検証 | 事実、引用、数値、意味、コード、図を誰がどう確認したか |
| 保存する根拠 | 変更前後のソース、関連するプロンプトと出力、必要なデータやコード |
例えば、AIが要旨を書き換えた際に研究対象集団を広げる表現を加え、著者が削除したとします。採用箇所と修正内容を残せば、「AIで論文を改善した」という記録より具体的です。
英文のAI利用声明:3つの例
以下は編集上の記載例で、出版社の公式テンプレートではありません。角括弧内を実際の情報に置き換え、行っていない確認や作業は削除してください。英語論文への投稿を想定した例です。
英文校正
During manuscript preparation, the authors used [tool, provider and model/version if available] to edit the language of [sections]. The authors compared the suggestions with the original text and checked that the scientific meaning, numerical values and citations were preserved. The authors reviewed the final manuscript and take full responsibility for its content.
実際の利用範囲と一致する場合に使います。翻訳や要約も行ったなら、その用途も明記します。
著者の資料に基づく下書き
The authors used [tool and model/version if available] to propose an outline and draft text for [sections] from [author-prepared notes/material]. The authors checked each retained claim against [sources/data], verified the references, and revised the text. The research interpretation and conclusions were determined by the authors, who take full responsibility for the manuscript.
参考文献を検証済みと書く前に、原典と本文の主張を支える内容を実際に確認します。引用・参考文献の確認ガイドでは、書誌情報の整合性と根拠の確認を分けています。
検証可能なデータから作成した図
The authors used [tool and model/version if available] to assist with code for Figure [number] using [dataset/source identifier]. The authors reviewed and executed the code, compared the plotted values with the source data, and checked labels and units. The data and code are available at [location]. The authors take responsibility for the figure.
コード作成支援によるプロットの例で、架空の実験画像には使えません。データとコードを本当に参照できる場合だけ公開先の記述を残します。図のキャプションにも、ツール、目的、寄与の範囲を投稿先の要件に合わせて記載します。
声明はどこに書く?
著者向け案内と投稿システムのAI利用に関する質問に従います。学術誌や用途によって、独立した声明、謝辞、方法の節などが指定されることがあります。研究方法にAIを使った場合は、研究を評価できる技術的説明も必要になるため、短い執筆支援の声明だけでは代わりになりません。
原稿、投稿フォーム、図のキャプションの内容を一致させます。指示が不明確、または矛盾する場合は投稿前に問い合わせてください。AIを利用していないという声明は、投稿全体について事実であり、かつ求められる場合に記載します。
LaTeX論文での実践手順
AIに修正を頼む前に動作するソースを保存し、変更範囲を指定します。「要旨の英文だけを校正し、数値・引用・数式を維持する」という依頼なら確認しやすくなります。修正後はソースを比較し、コンパイルしてPDFを確認し、利用記録を更新します。コンパイル成功は科学的主張の正しさを保証しません。
EasyLaTeXのプロジェクトでは、安全な修正とロールバックおよび意味を保ったAI校正を参考にできます。利用記録を著者管理のプロジェクト資料と一緒に保存し、実際の作業から最終的な声明を作ります。
よくある質問
申告すれば採択されますか?
採択の保証はありません。ガイダンスは申告自体が編集判断に不利益を与えないと説明していますが、学術的・編集上の要件を免除してはいません。
AIを共著者にできますか?
リンク先のガイダンスでは認められません。投稿内容への責任は人間の著者が負います。
すべてのプロンプトを論文に掲載しますか?
参照した原稿準備ページは、すべての執筆作業で全プロンプトを公開するとは定めていません。目的と範囲を正確に説明し、関連記録を保管して、学術誌が求める資料や研究方法の評価に必要な情報を提供します。